[2025 Tokyo Gendai] Kim Taek Sang

金澤相は30年以上にわたり、「水」というメディウムを通じて、色彩のにじみ、沈着、重なりを探求してきた作家である。床に横たえたキャンバスの上に極少量の顔料を溶いた水を流し、乾かすという反復的なプロセスは、修行のようでありながら癒しの側面を持つ「ケアの美学」を示している。数十層にも及ぶ塗り重ねの行為は、画面上に微細な空間の層を生み出し、光を散乱させて深みと密度を与える。まるで自然が自ら描いたかのような、淡く控えめな色彩を帯びた彼の絵画を、作家は「淡畵（たんが）」と名づけている。1990年代初頭、政治・社会的メッセージを含んだ作品から出発した彼は、イエローストーン火山の火口に広がる水の色に魅了され、芸術的な転機を迎えた。その後、水、空気、光、重力といった自然の構造をスタジオに取り込み、独自の造形語法を確立。物質性と感覚、概念と自然を結ぶ絵画世界を展開してきた。明確な対比よりも、見分けが難しい類似性や揺らぎ、光の振動を捉えようとするその絵画は、単色画の系譜の中で語られつつも、自然と人間、メディウムと認識の関係を繊細に探る独自の思索の軌跡を示している。彼は韓国の中央大学校で絵画を専攻し学士号を取得、弘益大学校で西洋画の修士号を修めた。これまでに、ソウルと大邱のリャンギャラリー、東京のタグチ・ファインアートなどで個展を開催しており、作品は韓国国立現代美術館、クムホ美術館、サムスン美術館リウム、水原市立アイパーク美術館などに所蔵されている。